2021年4月28日

「表現の自由」その他雑感

5月25日日曜日に行われた名古屋市長選挙では、「大村秀章愛知県知事リコール事件」 の渦中にいる現職の河村たかし(七二)が激戦を制して、5選(!)を果たした。

実はこの人物、2019年8月1日に開催された(8月4日に中止決定)『国際芸術祭あいちトリエンナーレ2019」に開かれた「表現の不自由展・その後」開催前に視察に訪れ、大村知事に「展示中止」を求めていた。(河村名古屋市長の発言について、大村知事は中止決定後に憲法違反だと批判しているが、中止前に言わなかったのは何故か)

中止の理由は「安全上の理由」ということらしい。そして必ずしも、キム・ソギョンさん、キム・ウンソンさんの制作した《平和の少女像》(正式名称「平和の碑」)だけが問題視されたわけではない。不自由展全体では、美術館などの「公共施設」や空間で、検閲や、規制などを受けた作品を展示している(た)。旧日本軍「慰安婦」制度、朝鮮人強制連行、天皇制、憲法九条、福島の放射性物質汚染、安倍政権批判など政治的主題を扱っているものが多くなっている。尚、日本では、外務省が少女像の呼称を「慰安婦像」に統一する方針を決めた。「『慰安婦』が少女ばかりだった印象を与える」など、変更を求める意見が自民党内で相次いでいたことを受けたものとされる。しかし、朝鮮人「慰安婦」は植民地支配を背景として、過半数が十代の女性だったことは、歴史研究で実証されている(金富子「朝鮮人『慰安婦』はなぜ、少女が多かったのか?」『平和の少女像はなぜ座り続けるのか』所収)


以上、雑誌『世界』2019年10月号掲載「私たちは何を失おうとしているのか?」岡本有佳さん(表現の不自由展実行委員)のレポートから抜粋引用させていただいた。

文中にあったとりわけ印象深い言葉を記しておく。

憲法学者の宮下紘さんの意見書の中の「表現の自由の担い手は、送り手と受け手の双方であり、そして両者による情報の伝達と、交流が必要」という一文だ。
つまり「表現の自由」とは、表現する者の自由、観客の知る自由、そして、作品と観客、観客と観客、作家と観客の情報の伝達と交流の場の実現を含むということである。
双方向の「情報の伝達と交流の場」がセットで「表現の自由」が守られているということは、ヘイトスピーチや性暴力的表現を使う「表現の自由」が成り立たないことの有効な反論になるとも思った。と岡本さんは感想を漏らす。

「表現の自由は一方通行では成立し得ない」・・・しかしこれを、インターネットというアノニマス「無名性」の世界に持ち込んだ時、
「発信・発言する者の自由、受け手の知る自由、そして、発言とそれを受ける者、受信者間、発信者と受信者・読み手の情報の伝達と交流の場の実現ははたしてどのような形で可能なのだろうか?インターネット上には、「現場」というものが無い。現場がない以上、情報の伝達と、交流の「場」というものが、どのように成立し得るのだろうか?



ー追記ー

昨日の『東京新聞』の夕刊にあった「デスクの眼」という論説だが、ロシアのナバリヌイ氏の率いる、FBKが、仮に過激派組織と見做されるようになったら、欧米は更に本腰を入れて対ロ制裁に乗り出すだろう。民主主義諸国が連帯して、攻撃的行動を抑止していかなければならないのは明白だ。ただ、日本政府は、ロシアでの人権侵害や、民主派弾圧への批判も避ける傾向が強い。形式的な対応に終始すれば、アジアでの民主主義のリーダーとしての基本姿勢に問われることになるだろう。

いったい日本がアジアでのデモクラシーのリーダーとは何処を押せばそういう言葉が出てくるのか?
前にも書いたが、昨年後半、ニューヨーク・タイムスが、日本を、正に、プーチンのロシア、習近平の中国、そしてトランプのアメリカと同列に「独裁国家」と規定したことを知ったのは、他ならぬ、東京新聞だった。その後、トランプは落選し、今は菅が安倍の後を継いでいる。
これによって果たしてニューヨーク・タイムスは、日本は最早独裁国家ではないと考えているのだろうか?何故なら最早安倍も、トランプも、政界のトップにはいないのだから、と?

日本政府は、ロシアでの人権侵害や、民主派弾圧への批判も避ける傾向が強い。
それは相手が強国ロシアであるからという理由ではない。そもそも、日本国民自体、極めて低い人権意識を持ち、言葉の真の意味での「民主主義国家」ではないという単純な理由からだ。(それは2年前に、「表現の不自由展・その後」をちらと一瞥した後、「中止すべきだね」と知事に進言した河村たかし名古屋市長が、今回もまた当選したという事実からも明らかではないだろうか・・・)

日本にはついに、ナバリヌイ氏のような民主化に命を掛けるような人間は現れることはないだろう。北一輝が日本には永遠に革命は起こらないだろうと、獄中で予言したように。


岡本有佳さん、ナバリヌイ氏に敬意を表して


















0 件のコメント:

コメントを投稿