2020年8月17日

悲しき熱帯夜2


予め断っておくが、以下の英文の引用の訳は間違っているかもしれない。
けれども、それが大きな誤訳であろうと大した問題ではない。

"Friendship is the agreement of two people against the whole world." 

「友情とは、全世界に反抗するために二人の間で交わされた同意である。」

これは何と読むのかわからないが、ギリシャの画家 Giannis Tsarouchis の言葉である。

わたしの訳が誤りでなかったならば、これに勝る友情の定義はないと言い切ることができる。わたしはこれと全く同じ意味のことを8月5日の投稿で書いている。

一方でこのギリシャの画家はこうも言っている。

"Friendship is the agreement of two people not to go deep, but to always stay on the surface."

「友情とは、決して深めず、常に表面にとどまることに対するふたりの同意である」

これはわたしの深く共感するチャールズ・ブコウスキーの言葉に相当する。

”Of course it's possible to love a human being if you don't know them too well.”

「もちろん人を愛することは可能だ、もしきみが「彼ら」のことをあまりに知り過ぎない限り」


わたしはこのブログで大きな間違いを犯した。

「相手をより深く知ろう」としたのだ。

「人間というものは底知れず怖いものです。「人を理解する」ということも、ほどほどにしておかないと・・・」という山田太一氏の言葉もある。

過去にここにもらった多くのメッセージや議論、対話を否定するつもりは毛頭ない。けれども、その結果、わたしも、コメントを残してくれた人たちも、共に傷つき、決裂した。
無論その責任はわたしにある。

わたしは「孤独」から、画家の定義の1にこだわり過ぎた。

しかし結局・・・まったく当たり前のことだが、全世界・・・言い方を換えれば「現実世界」を向こうに回して・・・などという人間が存在すべくもなかった。そしてより現実的な第二の定義をおざなりにした。そしてすべてを失った。

画家の言葉、ブコウスキーや山田太一の言葉、これらは教訓でもあり処世術でもある。
処世訓など嫌いだと言っても、この言葉には明らかに真実が含まれている。

どんなに親しくとも、深入りは禁物だと。

山田氏は他でも言っている、人と人とが真に理解し合えるという考え自体が幻想だ、と。

加えて、パソコンのディスプレイという「非・言語的な情報」を悉く捨象した関係であってみれば、相互理解など絵に描いた餅でしかない。無論ディスプレイ上の規格化された「文字」だけでも理解は可能だと思う人もいるだろう。しかしわたしのように古いタイプの人間には、文字(言葉)+言葉以外の情報が組み合わさって、初めて「対人」になる。

仮に、万にひとつ、定義1が可能であったとしても、それはあくまでも、「その人が自分の目の前にいる」場合に限定される。

相手をもっと知ろうという欲求は、おそらくは、あまり賢明な考えではないのだろう。
今更「彼ら」に言われずとも、人間存在の底知れなさ、その闇は知り尽くしているはずではなかったのか。


尚、画家はこんなことも言っている。

"Do not separate my childhood from the life of an adult."

「私の人生で、子供時代と、大人になってからを区別するな」



ー私は世を愛しなかったー
  
わたしは世を愛しなかった、
世もまた私を
彼らの臭い呼吸(いき)のまえに諂(へつら)ったこともなく
彼らの偶像の前に、恭しく膝を屈したこともない
心にない笑を頬に浮かべもしなかった
うつろな木魂(でく)を崇めて、高らかに叫んだこともなく
人群れの中にありながら、その仲間とは扱われなかった
彼らと交りながら、 ただ独り立っていた
屍衣(しえ)のように、 人と異なる思想を身にまとった
今もなお、というべくは、あまりに心屈して汚れたのだが。

       
私は世を愛しなかつた、世もまた私を
所詮、敵ならばいさぎよく袂を別とう
だが私は信じたい、彼らには裏切られたが 
真実ある言葉、欺きえぬ希望があり
めぐみ深く、過失の穿を造らぬ美徳があると、
また、人の悲しみを心から悲しむものもおり
一人か二人かは、見かけと変わらぬものもあり
善とは名ばかりでなく、幸福とは夢でない、と。

ジョージ・ゴードン・バイロン「チャイルド・ハロルドの巡礼」



しかし「その人」が誰であるかを知ろうとしてはならない。
「あなた」が「その人」であるのかを、知ろうと急いてはならない・・・











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