プリーモの詩の解説で、特に印象に残った個所を引用しておく。
「生き残り」という詩についての竹山博英氏の解説。
この詩では、レーヴィにとって重荷になっていたいくつかの苦しみが語られる。
初めのものは、訴えかけても聞いてもらえないという苦しみだ。この詩では4行目までがコールリッジの「古老の船乗り」からの引用である。ただしコールリッジの詩では、「恐ろしい体験談を語り終えるまでは」となっているところを、レーヴィは「そして話を聞いてくれるものが見つからないなら」と書き換えてある。
レーヴィにとって、アウシュヴィッツの体験を語ることは、自分自身の存在意義に関する重要な問題だった。だが彼の言葉に耳を貸さない者たちがいた。自分の話を聞いてもらえないという体験は、彼の心を深く傷つけ、それが終生彼を苦しめた。この3行目の詩句の書き換えに彼の傷ついた心のさまが読み取れる。
◇
元のコールリッジの詩で「恐ろしい体験談を語り終えるまでは」と記されているところが、プリーモの詩では、「そして話を聞いてくれるものが見つからないなら」に変化している。
これに続けるならば、わたしの苦しみは、
「そして何者もわたしの話を理解できないならば」
という苦しみである。
「孤立と独特の認識の化け物」として長く生き続けることはできない。
そして「独特の認識の化け物」の話を理解できるものを見つけることはできない。
だからこそ、「孤立と独特の認識の化け物」なのだ。
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