『そしてわたくしはまもなく死ぬのだらう』
…………………
そしてわたしはまもなく死ぬだらう
けれどもわたくしといふのはいったい何だ
何べん考えなおし読みあさり
そうともききこうも教えられても
結局まだはっきりしていない
わたしといふのは……
死の直前の宮沢賢治はこう歌っている。ずいぶんはっきりした個性の持主で、一生を「実存的」に生き抜いた求道の人、宗教的精進と農民の為の実践に生き抜いた人である彼にしてなお、「わたしというのはいったい何だ」と生涯の終わりに言っているのだから、凡人の私たちを考え込ませるに足る・・・
『神谷美恵子著作集2 人間をみつめて』第3章「人間を取りまくもの」(1980年)より
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