2019年2月19日

「人間」から遠く離れて…


夕方4時からの診療に間に合うように行こうと思っていたが、午前中なかなか寝付けず、結局11時ごろに、自転車に乗って内科に行った。春めいた暖かい日差しの中を自転車で公園を抜け、昔ながらの団地群を横目に見ながら医院に向かう。
久しぶりに浴びる太陽の光。しかしわたしの心はただひたすらに「寂寞」「荒涼」・・・
それは単に、往復の道沿いに、まだ梅の花も、ほころびた木蓮も見ることがなかったということだけが原因ではないだろう。昨年の秋に、金木犀の香りの中、同じ道を走ったときにも全く感興というものを感じなかった。何かに心を動かされるという感情が完全に蒸発してしまったのかもしれない。

先週のデイケアの折りに、今更ながら手続きの一環としての担当者との面談があった。
「今の気持ちはどうですか?」と訊かれ、「今こうしてHさん(担当者)の前に座っている自分が不思議です」と答えた。向こうは、デイケア利用者として認められるだろうか、という、昨年のわたしの心配を知っているので、いまここに「デイケアの利用者として」Hさんの前に座っている自分が不思議・・・と解釈したらしい。ニコニコしながら、そんな心配いらなかったのにね。今となっては笑い話ね。といった反応だった。けれどもわたしがいったのは、いまわたしがこうして生きていて、このデイケア室のスタッフルームに存在していることの不思議さ、といったようなことだった。

精神面のみならず、身体的にも生きてゆくことがつらくなっている。
けれども、何度でも繰り返すが、医療の力で、今のこの状態が「良くなる」「健康になる」ということの意味がまるで分からない。
例えば、心身共に完全に健康な状態で、食うものに困らず、テレビもインターネットもできる環境の住宅とともに、広大な砂漠の真ん中に置かれたらどうだろう?生命を維持するあらゆるものが揃っている。ただ無いものがふたつだけ。心とぬくもりを通わせることのできる「他者」と「外界」だ。

単純明快な話だ。健康になり、どこにでも行けるようになったとして、何もしたいことがなく、どこも行くところがない。そういう状態での「健康」とか「良くなる」ってどういうこと?ということだ。

例えばスマホ(この文字列を打つのは本当に気が滅入る)。相当に思慮深い人であっても、最早「それ」を持っていない人は極めて少ない。なぜそんなに「あたりまえのように」「持つことを疑うことがとてつもなく不思議であることのように」それを持てるのか?
スマホを持つことの是非ではなく、それに対するわたしの、絶対に払拭することのできない抵抗、嫌悪だけを取り出しても、わたしは既にほとんどの人との間に巨大な亀裂を、決して架橋することの能わざる隔たりを抱えている。
「SUMAHO」に限ったことではない、わたしはTVを視ないが、インターネットをやっていると嫌でも目に飛び込んでくる広告、わけても「キャッシュレス」「A.Iの自我」「自動販売機に生体認証」...etcという広告(?)を見るたびに、誇張ではなく、心に痛みが走り、一刻も早くそのような世界からの逃亡=死を想うのだ。もう十分、もうたくさんだ、と。

最近は自殺のことをよく考える。「痛い」「苦しい」といっても、例えばその痛みや苦しみが、この穢土からわたしを引き離してくれる時に生じる痛みであり苦しさであるなら、縊死であっても、10階のビルからの飛び降りでも、飛び込みでも、すべては解放の痛みとして堪えられるのではないか。などと考える。

自殺は今や確実に、遠くない将来の生き方の選択肢として、確かな地歩を築いている。

「良くなりたいとは思わないのか?!」と問うより先に「良くなるということの意味」を教えてくれ。


尚、タイトルの『「人間」から遠く離れて』というのは、現代人は最早人間とは言えないというような意味ではなく、【多数派正常の原則】に則って、わたしの方こそ、現行の人間の概念から大きく逸脱している、という意味である。










2 件のコメント:

  1. 昔、「私は死にたくない」と云う映画がありましたね。思い出しました。私は若い頃引きこもり状態だった時に、テレビの“洋画劇場”とか云うので結構、名画と云われる映画を見てますが、その時に見てます。ラストの、暗い刑務所の世界から地上に出て、車のクラクションで現実の世界に引き戻されて、何故かホッとした事を覚えています。

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    1. ええ、知っています。スーザン・ヘイワードの映画ですね。冤罪で死刑になる女性。
      ラストは、耳の悪い弁護士(?)が電気椅子での死刑の執行後、外に出て、外界のざわめき彼女の死に対する記者たちの話がひどく彼を煩わせ、補聴器のスイッチを切って静寂の中、車に乗り込むシーンでしたね。

      いい映画でした。

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