『たがや』という落語で、夏の花火が盛大に打ち上げられている中、両国橋は大勢の見物客で立錐の余地もなかった。橋のこちらからたがや、向こう側から伴を連れた侍が馬に乗ってやってきた。ただでさえ身動きもとれない中、ふとしたはずみで、輪っかに丸めたたがやの「たが」の留め金が外れて、伸びきった「たが」が、馬上の侍の傘をはじき飛ばした。
「無礼者そこへなおれ!」
平蜘蛛のようにはいつくばって謝っても許してくれない。
今まさに無礼討ちで首をはねられそうになった時、江戸っ子であるたがやは、もはやこれまでと橋の上にどっかと胡坐をかき、ひとしきり侍に悪態をつき、
「さあ、どこから斬る?腕からか?脚からか?首からか?どこを切っても真っ赤な血が流れてなけりゃ取り替えてやらあ!」と啖呵を切る。
何処を切っても真っ赤な血が流れている。そんな文章を書きたいとふと思った。
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