2021年9月26日

わたしの「手をめぐる四百字」

 「最期までの味方」 Takeo 

 有名人の死にさして驚いたことはないが、唯一例外がある。俳優ロビン・ウィリアムスが縊死した時である。わたしの知っている彼は、笑わせることのできない人などいないように感じられた。
 一方、「浪速の爆笑王」こと桂枝雀師匠が、自宅で首を吊り意識不明の重体、という報に接した時には、心のどこかで「やっぱり」という気持ちはあったが、ロビン・ウィリアムスの時のような「驚き」や「意外さ」は感じられなかった。
 写真家ダイアン・アーバス、詩人シルヴィア・プラスはそれぞれ、オーブンに頭を突っ込んで自死した。
 ロビン・ウィリアムスや枝雀師匠の首に巻かれた「ロープの輪」を作ったのも、オーブンのガス栓を開いたのも、自身の生死を問わず、持ち主の意思に従う手であった。手は無言で「自分らしく」生きることを手助けしてくれる、最後の最後まで「わたしの」味方である。







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