2018年1月4日

かなしき肉体(放哉の句に寄せて)

淋 し い か ら だ か ら 爪 が の び 出 す  ー放哉

この句は西行の

捨て果てて身は無きものと思へども 
雪の降る日は寒(さぶ)くこそあれ
花の咲く日は浮かれこそすれ

という歌と同じ状況を詠っている。

どんなに過酷な孤独の裡にあっても、どんなに世を厭うていても、躯からは爪がのび、ひげが生え、腹が減り、寒さに震え、花の頃には心も浮き立つ。
まるでこちらの懊悩や悲しみとはまったく無縁に、躯はそれ自体自律しているかのように見える。

同じく

の び て 来 る ひ げ が 冷 た い

も、凍てつく寒さの中でも芽を吹く木や花を思わせる。


こ っ そ り 蚊 が 刺 し て 行 っ た ひ っ そ り (放)

血の流れなくなった冷たい皮膚に蚊はとまらない。

死のうという間際、岸壁の際に立っても蚊に喰われた跡を無意識にかいている。

結局のところ、人間なんて、そんな愛(かな)しい滑稽な生き物なのだ。












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