2018年1月20日

あさましな過ぎ来し道を見かへれば只わが影をわれ抱き来ぬ

レディー・シャーロットは、川の中洲の一室に生き、外の世界を直接見ることはできなかった。来る日も来る日もタペストリーを織り続け、鏡に映し出される外界を見るのみだった。
或る時、ランスロット卿の歌声を耳にした彼女は、掟を破り外の世界を見てしまった。
その瞬間、鏡は音高くひび割れ、糸が身体中に巻き付いた。
彼女はそれを振り払い、小舟に乗ってランスロット卿を負ったが、船がキャメロット城の岸に着いた時にはシャーロットは既に息絶えていた。



鏡にうつる「世界の影」しか見ることの出来ないシャーロットは、
いのちを失うほどに焦がれるものを外の世界に見出した。
憧れに手を伸ばしつつ命を失うということが、何故か幸福なことのように思えてならない。

ラファエル前派やヴィクトリア朝の画家たちによって描かれた「レディー・オブ・シャーロット」の絵は、どれも川辺に生い繁る葦や草木に取り巻かれ、ミレイの「オフィーリア」とともに、最も美しい死の姿のひとつに、わたしの目には映るのだ。


其のために いのちも魂も捧ぐべき ものか人かのあれと祈りし 
ー片山廣子


誰か外にいますか?

外の世界の様子はいかがですか?

まだ野の花は咲いていますか?

まだせせらぎの音は聴こえていますか?

まだ小鳥たちは囀っていますか?

土のにおい、草のにおいはしますか?

黄昏ゆく空は茜色に染まりますか?

梢の葉は風に揺れていますか?

夜空に月は映えますか?

だれか・・・誰か教えてください・・・


「シャーロットの乙女」ウォルター・クレイン (1862年)
The Lady Of Shalott, 1862, Walter Crane. (1845 - 1915)









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